汗をかくたびに気になるわきのニオイ。
1日に何度もデオドラントを使ったり、
周囲にニオイで迷惑をかけていないか気にしたりと、
ワキガ体質の人は何かと苦労が絶えないものです。
ワキガ体質遺伝のメカニズムを徹底解析!
ワキガが遺伝するって本当なのでしょうか?
ワキガが遺伝するってホント?
「ワキガが遺伝する」というのは本当です。
もっと正確に言うと、遺伝するのは「ワキガになりやすい体質」です。
ワキガの原因は、アポクリン汗腺と呼ばれる汗腺から分泌される汗にあります。
アポクリン汗腺が大きく数が多いとわき汗をかきやすくなり、その分ワキガが強く臭いがちです。
このアポクリン汗腺の大きさや数といった特質は親から子に遺伝します。
自分自身がワキガに悩むだけでもつらいのに、子どもにまで遺伝するかもしれないなんてとてもショックですよね…。
ワキガ体質を決定する遺伝子のメカニズムとは?
「耳垢が湿っている人はワキガも臭いやすい」という説を耳にしたことはないでしょうか?
ワキガの原因となる汗を分泌するアポクリン汗腺は、耳の中にある外耳道という部位にも存在します。
アポクリン汗腺が多い人は耳垢が湿りやすく、同時にわき汗も臭いやすいのです。
実は「耳垢が湿りやすいかどうか=ワキガ体質かどうか」については、46本あるヒト染色体のうち16本目の染色体上にある「ABCC11遺伝子」が関係していることが判明しています。
ワキガ体質の遺伝に関係するABCC11遺伝子の特徴
ABCC11遺伝子の形質は、
- 耳垢が湿り気を帯びてねばつく湿型
- 乾燥してカサカサした質感の耳垢になる乾型
の2種類に分かれます。
このうちアポクリン汗腺の数が多くワキガになりやすいのは湿型の遺伝子を持つ人です。
日本で湿型の遺伝子を持つ人は全体の20~30%程度で、欧米に比べるとワキガ体質の人は少ないと言われています。
ヒトの遺伝情報は「アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)」の4つの塩基のうち2つが結びついた「塩基対」の配列によって決定されています。
ABCC11遺伝子の中で、ある特定の部分の塩基対が「GG」または「GA」だと耳垢が湿型になり「AA」だと乾型になります。
ABCC11遺伝子のタイプは地域によって分布率が違う!?
湿型タイプのABCC11遺伝子の持ち主が日本で20~30%程度であることはすでに述べましたが、世界的に見ると欧米では90%以上の人が、特に黒人ではほぼ100%の人がワキガ体質だと言われています。
また、アジアでは中国人が4%、朝鮮人8%と極端に湿型が少ないところが特徴的です。
- 日本を始めとするアジア系民族にはワキガ体質の人が少ない
- 白人や黒人ではワキガ体質の人が大多数を占めている
ということになります。
世界全体で見るとワキガ体質の人の方が圧倒的に多いわけですから、ワキガを気にしすぎる必要はないのかもしれませんね。
ワキガ体質が遺伝する確率はどのくらい?
では、ワキガ体質が子どもに遺伝する確率はどのくらいあるのでしょうか?
遺伝子にはその遺伝子が持つ特質が子に伝わりやすい「優性遺伝子」と、特質が伝わりにくい「劣性遺伝子」があります。
耳垢の湿型遺伝子は優性遺伝子なので、自分自身がワキガ体質なら自分の子どもも高い確率でワキガ体質だということになります。
もう少し具体的な数字を計算してみましょう。
A=湿型遺伝子、a=乾型遺伝子と仮定すると、遺伝子の組み合わせはAA、Aa、aaの3タイプになり、AA、Aaの組み合わせの時にワキガ体質となります。
両親が持つ遺伝子の組み合わせは、①AA×AA、②AA×Aa、③AA×aa、④Aa×Aa、⑤Aa×aa、⑥aa×aaの6パターンです。
生まれてくる子どもの遺伝子の組み合わせは次のようになります。
- ①の場合…子どもの遺伝子の組み合わせはAA1通りです。
- ②の場合…子どもの遺伝子の組み合わせはAAまたはAaの2通りです。
- ④の場合…子どもの遺伝子の組み合わせはAA、Aa、aaの3通りです。
両親がワキガの場合、80%以上の確率で生まれてくる子どもにワキガ体質が遺伝されることになります。
生まれてくる子どもの遺伝子の組み合わせは次のようになります。
③の場合…子どもの遺伝子の組み合わせはAa1通りです。
⑤の場合…子どもの遺伝子の組み合わせはAaまたはaaの2通りです。
両親のどちらか片方だけがワキガ体質の場合、50%以上の確率で生まれてくる子どもにワキガ体質が遺伝されることになります。
子どもの遺伝子の組み合わせは両親と同じaaのみなので、ワキガ体質にはなりません。
ただし、この場合でも乱れた食生活などの後天的な要因でアポクリン汗腺が肥大して、子どもがワキガ体質になることはあり得ます。
子どもは大丈夫?ワキガを遺伝させない方法について検証!
親の両方もしくはどちらか片方がワキガだと、高い確率で子どもにワキガ体質が遺伝してしまうことはわかりました。
では、ワキガ体質を遺伝させない方法はあるのでしょうか?
ワキガ体質を遺伝させない方法なんてない!?
残念ながら遺伝子を操作してこれから生まれてくる子どもにワキガ体質が遺伝しないようにする、なんていう方法はまだありません。
遺伝子治療はまだ一般的な治療法ではなく、がん治療や遺伝子疾患の治療にしか使用されていない技術なんです。
「子どもが生まれる前に対処してあげられればいいのに…」
と考えたお母さんには残念な情報ですね。
医療の力で子どものワキガを何とかしてあげたいなら、大人のワキガと同じように皮膚科で手術や治療を受けさせてあげるしかないのが現状です。
ワキガは赤ちゃんの頃から臭うの?
もしも自分のワキガ体質が子どもに遺伝したら、生まれたばかりの赤ちゃんの頃からワキガが臭うのでしょうか?
安心して下さい!
そんなことはありません。
ワキガの原因となるアポクリン汗の分泌が活発になるのは、第二次性徴期を迎える10歳を過ぎてからです。
子どもにワキガ体質が遺伝していたとしても、
- アポクリン汗の分泌量が少ない
- アポクリン汗を分解する雑菌が皮膚表面に存在しない
などの場合にはワキガは臭いません。
つまり、赤ちゃんの頃はニオイの原因になるアポクリン汗の量が少なく、わき汗をかいてもニオイはあまりしないのです。
「これから生まれてくる赤ちゃんがワキガだったらどうしよう!?」
と心配していたお母さんも、とりあえずは一安心ですね!
ワキガ体質が遺伝した場合にワキガを予防する方法は?
「両親がワキガ体質で自分もワキガに悩んでいる」
「自分自身がワキガ体質で、子どもがワキガに悩まないか心配だ」
という場合、何か打つ手はないのでしょうか?
ワキガはアポクリン汗に含まれる物質を、皮膚表面に存在する雑菌が分解することによって臭うようになります。
すでに述べたように、アポクリン汗が分泌されても皮膚表面に雑菌が存在しなければワキガは臭いません。
そこでおすすめしたいワキガ予防法が、「わきを清潔にすること」です。
- 入浴時にボディソープをつけてわきを洗う
- 抗菌成分入りのスキンケア化粧品でわきを保湿する
などの対策を取って、わきを清潔に保ちましょう。
ただし、わきを清潔にしたいあまりゴシゴシと強く洗ったり、強い殺菌作用を持つ消毒薬を繰り返しわきに塗ったりすることはおすすめできません。
皮膚への過度な刺激は肌のバリア機能を弱めて皮脂の過剰分泌を招くため、かえってわき汗の量が増えてしまいます。
また、皮膚表面に存在する雑菌の中にはニオイの原因菌の増殖を抑えてくれる無害な菌もあるのです。
むやみにすべての菌を殺菌してしまうと、今まで無害な菌によって抑えられてきたニオイの原因菌が一気に繁殖し始めて、かえってワキガが臭いやすくなることもあります。
わきを洗うときには優しく洗い、入浴後は乾いたタオルで水気をよく拭き取ってからスキンケア化粧品で抗菌・保湿するだけで十分清潔になりますよ!
遺伝的にワキガ体質で汗をかくとワキガが臭いやすくなる人は、デオドラント製品でわきをケアするのもおすすめです。
薬局やドラッグストアではスプレータイプやロールオンタイプなど様々な形態や成分のデオドラントが販売されています。
好みや使い勝手の良さで選ぶのはもちろんですが、以下のようなことに気をつけて選べばワキガをしっかり予防できるでしょう。
アポクリン汗の分泌を抑えるためには、フェノールスルホン酸亜鉛やクロルヒドロキシアルミニウムなどの制汗成分が配合されているデオドラントを選びましょう。
市販のデオドラントの中には消臭成分によってワキガのニオイを抑える効果しかないものもあります。
デオドラントを選ぶときには、消臭成分以外に制汗成分も配合されているかどうか確認して下さいね!
アポクリン汗の分泌とニオイの原因菌を同時に抑えることで、より効果的なワキガ予防になります。
わきが乾燥すると、バリア機能が低下して皮脂の過剰分泌の怖れがあることはすでに述べました。
ニオイの原因菌は皮脂をエサにして繁殖するので、皮脂の過剰分泌はぜひとも避けたいところです。
保湿成分入りのデオドラントは肌の乾燥や皮脂の過剰分泌の予防に役立つので、使ってみて損はないと思いますよ!
遺伝的にワキガ体質でアポクリン汗の分泌量が多い人は、普段の食生活にも気を配ることをおすすめします。
一般的に肉類が多いと汗のニオイがきつくなると言われていますが、肉類以外にも気をつけたい食べ物がこんなに色々あるんです。
- 肉類
- 香辛料
- スナック菓子
- 乳製品(バターやチーズ)
- カップ麺
- アルコール飲料
反対に、こんな食べ物はワキガ予防におすすめです。
- 梅干し
- レモン
- ヨーグルト
- 納豆
- 緑茶
- ワカメ・メカブなどの海藻類
まとめ
この記事ではワキガと遺伝の関係に注目して、
- ワキガ体質が遺伝するメカニズム
- ワキガ体質を遺伝させない方法
- ワキガ体質が遺伝した場合の予防法
について詳しく検証・解説しました。
「自分のワキガ体質が子どもに遺伝してしまったらどうしよう?」
すでに子どもがいるお母さんも、これから出産を控えている人も、心配になってしまいますよね。
しかし自分自身やパートナーがワキガだからと言って、ワキガ体質が子どもに必ず遺伝するとは限りません。
また、ワキガ体質が遺伝したとしても、適切なケアや予防法を実行すれば日常生活への悪影響を抑えることができますし、ニオイが気になるほど酷いときには皮膚科で治療するという選択肢もあります。
むしろワキガを気にしすぎることでストレスを感じて多汗症になったり、アポクリン汗中のニオイの原因物質が増えたりする場合もあるんです。
ワキガ体質が遺伝するからと言って、過度な心配は不要です。
むしろ子どもがワキガに悩むようになったら気にしすぎないようにと伝えて、適切なケアの方法を教えてあげて下さいね!